
整形外科
整形外科
整形外科医が診療する疾患は多岐にわたり、骨、筋、靱帯、脊髄、末梢神経などの運動器に関する疾患に対して診断、治療をします。整形外科でよくみられる症状、疾患について紹介します。
脊柱は、頸椎、胸椎、腰椎などの脊椎(背骨)からできています。脳から出た神経の束は脊髄と呼ばれ、神経の通り道である脊椎の脊柱管を通過し、枝分かれして、手や足につながっていきます。
脊柱・脊椎の構造
加齢や外傷によって、脊柱の変形をきたすと、腰や背中、首の痛み、姿勢異常などの問題がでてきます。神経が靭帯や椎間板に圧迫されると、手や足の痛みや痺れが生じます。また圧迫の程度がひどくなると、運動麻痺や排便や排尿の問題が出てきます。脊柱の変形の程度や不安定性の評価は主にレントゲンで行われ、椎間板や靭帯などの軟部組織や神経の圧迫の評価にはMRIがよく用いられます。脊椎の疾患は、変形性脊椎症、椎間板ヘルニア、脊柱管狭窄症、脊椎圧迫骨折など様々です。痛みや痺れの症状に対して、多くの場合は鎮痛剤や外用薬、リハビリなどの保存療法が行われます。保存療法で症状の改善がみられない場合や運動麻痺などの症状がでてきた場合は、手術が必要になってくることがあります。
人体には、膝、股関節、肩、手指などの様々な関節が存在します。関節は骨と骨が連結する部位で、関節の周りには骨だけでなく、軟骨、靱帯、関節包、筋、腱などの様々な組織があります。
膝・股関節・肩の構造
加齢や外傷によって、骨と骨の隙間が狭くなり、関節の痛みや動きの制限、変形が生じる疾患を変形性関節症と呼びます。変形性関節症によって症状が出やすい部位として、膝、股関節、手指の関節があります。膝や股関節は、体重がかかる関節であるため、変形性関節症によって痛みや動きの制限がでてくると、歩いたり、立ち上がったりするなどの日常生活動作がしづらくなります。症状が軽い場合は、鎮痛剤や外用薬、注射、リハビリ、サポーターなどの保存療法が行われます。保存療法で症状が改善しない場合は、手術が必要になってくることがあります。膝関節や股関節の手術には様々な術式がありますが、最もよく行われる手術は人工関節置換術になります。人工関節置換術は、変形した骨を切除し、金属やポリエチレンなどを用いて新しい関節を形成する手術です。
手の指の第1関節で変形性関節症が起きた場合をヘバーデン結節、第2関節で起きた場合をブシャール結節と呼びます。へバーデン結節やブシャール結節は中年の女性に多い疾患です。これらの疾患に対して手術が行われることは少なく、痛みに対しては鎮痛剤やテーピングなどで対応することが多いです。
手指の変形性関節症
肩も痛みや動きの制限をきたしやすい関節です。肩には腱板という筋肉が骨に付着しています。加齢や外傷によって、腱板が損傷すると肩の痛みや動かしづらさがでてきます。多くの場合、鎮痛剤や注射、リハビリなどの保存療法が行われます。保存療法で痛みや動かしづらさが改善しない場合は、関節鏡などの手術が行われることがあります。
脊髄から枝分かれした神経は末梢神経となって、手や足などに分布し、運動や感覚をつかさどります。末梢神経が損傷したり、圧迫を受けたりすると、痺れや動かしづらさがでてきます。末梢神経が圧迫を受けやすい部位として、手首の手のひら側の手根管と肘の内側の肘部管があります。手根管や肘部管で神経が圧迫されると、手指が痺れたり、進行すると筋肉がやせたり、指で細かいことがしづらくなったりします。痺れに対しては、まず痺れを改善する薬や注射などの保存療法が行われます。保存療法で改善がみられない場合や動かしづらさが出てきた場合は神経の圧迫を解除する手術が行われることがあります。
体を動かす筋肉は腱になって骨に付着します。腱が骨に付着する部位である付着部に炎症が起きると痛みや腫れが出てきます。特に付着部の炎症が起きやすい部位として、肘、膝、踵(かかと)があります。付着部の炎症に対しては、できるだけ安静にすることが大事です。痛みが持続する場合は、鎮痛剤や注射、圧力波治療などが行われます。
腱鞘は腱が通過するトンネルになります。腱や腱鞘が炎症によって肥厚すると、腱鞘の中を腱が上手く滑走しなくなり、痛みや引っかかり感がでてきます。この状態を腱鞘炎と呼びます。腱鞘炎が起きやすい部位は指の根元の部分で、ばね指とも呼ばれます。腱鞘炎の治療はまず局所を安静に保つことが大事です。安静にしても痛みが良くならない場合は、腱鞘への注射が行われます。注射を複数回行っても、痛みや引っかかり感が改善しない場合や繰り返す場合は、腱鞘を切開する手術がすすめられます。
指の腱鞘炎、ばね指
転倒や交通事故、スポーツなどによって、骨折や捻挫、脱臼、打撲など様々な外傷が生じます。外傷全般に言えることとして初期対応がとても大事で、初期対応によって受傷後の経過が大きくかかわってきます。外傷の程度が軽ければ、包帯固定やギプス固定、リハビリなどの保存療法が行われます。骨折や脱臼などの程度がひどい場合は、手術が必要になることがあります。
私は日本整形外科学会認定の整形外科専門医・指導医で、地域の中核病院や大学病院で整形外科医として研鑽をつんできました。前述のように、整形外科医が診療する疾患は様々です。そのため整形外科の中でも、脊椎、股関節、手の外科、スポーツなどの複数の専門分野があります。今まで勤務してきた病院では、それぞれの分野の専門家の先生に指導していただき、骨折や脱臼などの外傷手術や、膝や股関節の人工関節置換術、脊椎手術など様々な手術を経験してきました。
整形外科の手術をすべきかどうかの判断は、実は非常に難しく、実際に手術を執刀してみないと分からないことが多々あります。患者さんが手術をした後、どのくらい症状が改善するかは、自ら手術を執刀した経験がないと、実際のところはよく分からないのではないかと思います。
当院で手術をすることはありませんが、勤務医として整形外科の様々な手術に携わってきた経験を活かして、手術すべきかとうかの判断やどのような手術が行われるか、などアドバイスさせていただきます。また手術の必要性がある患者さんには、近隣の手術が可能な信頼できる病院へ紹介させていただきます。手術が必要のない方や手術が難しい方に対しては、薬、注射、リハビリなど、患者さん一人一人の病状にあわせてクリニックでやれる治療をさせていただきます。
TOP